久世 建二展 The avant-garde ceramic art
ギャラリーマロニエ 久世建二展2012によせて
焼き物は「ばけもの」と言われる。適度な水分を含む柔らかい粘土や、乾燥した固い土など大地の土は様々な状態の変化を示す。私はこのように土が本来持っている物理的・科学的な性質を、造形の重要な表現の要素として立体作品を表現してきた。陶芸と呼ぶより土による表現、セラミックアートやクレイワークの方が相応しいと思っている。土は作る人の手や道具の痕跡はもとより、心の動きまでも瞬時に捉えてくれる。土が自ら表わす表情の中には高温の状態での変化など、到底人為の及ばない不思議な造形をも無限に記憶している。私の仕事はその記憶を呼び覚ますことにある。
ある時、幾何学的な形状をした柔らかい土くれが床に落下した。それは一瞬のできごとであった。なんと無機質に見えた粘土が生き物のように変身を遂げたのだ。痕跡シリーズや落下シリーズの始まりだった。制作の過程で作者の手から離れたところで作品が成立することにも魅力を感じた。
今回の展示作品は前回、前々回に引き続き110×60×15cmの人型や十字架が20点床に並ぶ。2001.9.11の事件以来作り続けている墓標であるが、2011.3.11以後は東日本大震災の犠牲者への追悼を込めて作り続けている。
2012年9月25日 久世建二
2012年9月25日〜10月7日