浅見惟展 -つむ-
私にとって、漆は「層」を作る仕事であるという印象がある。幾重にも下地工程を重ねる作業、磨き上げた際に漆の見せる艶やかさから感じる透明感、技と技の重なりが一体となり、奥深く図り知ることの出来ない世界を表現できる事に漆の魅力はあると感じている。
作業を重ねる毎に変化する漆、技の重なりが艶めく色を表すには時間を必要とする。手間と時間のかかる漆は、技の重なりと共に時間を取り込む積層なのではないだろうか。時間をかけ、育まれる造形から感じ取る感覚を私は、“時間を感じさせる美しさ”と呼んでいる。
数ある漆の作業工程が見せる表情は、全て作品の要素と思えて仕方がない。作業毎に変化する漆の刹那の変化を、表情の対比として留め、作品にこの表情達をどのように生かすのかを考えてきた。
2012年10月23日〜10月28日