石原輝雄・純子コレクション「マン・レイのパリ 1972年」
メトロノームの振り子に眼の写真を貼り付けた自作のオブジェ『永遠のモチーフ』を、頭に乗せて笑っているマン・レイ(1890-1976)を40年前の新聞に見つけて嬉しくなった。フランスは不思議な国で、そんな古い新聞を今でも売っている店がある。日本は湿気に包まれた森の国だけど、あちらは程良く乾燥した石の国、劣化しないままの紙が残されている。
本展は、パリに憧れたアメリカ人のひとりであるマン・レイが、芸術家として認められた最晩年の1972年に焦点を絞り、展覧会を訪れる観客の期待を追体験しようと云う試みである。
好きな作家の展覧会が近付くとチラシを貰ったり、街角の商店に貼られたポスターを見ながら、どんな作品が展示されるだろうと思うのは自然な感情。美術館から招待状を送られたら舞い上がってしまうよね。過ぎ去った時間を取り戻す為に、当時のポスターとカタログと案内状、それに会場写真や新聞などを用意した。会期が終われば捨てられてしまうような品物を、マン・レイに狂っているわたしは、残しておいた。どうぞお楽しみください。
2012年12月4日〜12月16日